ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第13章 地獄の中へ
「ガキ同士でキスなんて、随分マセてんなァ?」
『…や、』
「嫌じゃねえだろ?ほら、ハグまでしてやがる。…恋人ごっこには早すぎるンじゃねえのかい?」
私は腕に力を入れ、拘束を解こうとした。
「暴れんな!!」
次の瞬間パシンッと頬を叩かれる。
その勢いで唇を切ってしまい、血の味がする。
8歳のあの出来事が頭を過ぎって、体が固まる。
「だから言ったじゃねえか、大人しくしてろって。…なあ、こいつはお前のボーイフレンドなのか?」
『ちが…う』
「…ほう、そうか…まだガキだもんな…それにしてもなんでこいつはこんなガキらしくねえ触れ方をしてんだ?ごっこ遊びにしちゃあ上出来だぜ。」
男はベッドから降りて引き出しを漁ると何かを持ってこちらにやってきた。
ニヤッと笑った男の顔を最後に視界が遮られた。
『…っやだ…外して!』
「うるさいお口も塞いじまおうな。」
ビリッと音がすると口をテープで塞がれてしまった。
『んん…んーっ!!』
アイマスクにテープ、それに腕も拘束されている。
「…そうだなあ。」
男はそう呟いて私の襟元を左右にグイッと引っ張った。
バチバチ…ビリッ
『!』
服の繊維が切れる音がした。
見えないが、鎖骨当たりが外気に触れている。
「ハッ、ガキのくせに色気あるじゃねえか」
カシャ
写真…?
アスラン…怖いよ…
頭の中で彼の姿を思い起こそうとするが、あまりの恐怖で何も考えられなくなってしまう。
「…アスラン、だっけか?今頃お前を探してるかもな。今からここに連れてきてやるから、いい子で待ってろよ。」
『んんーっ!ん!!!』
私は必死に首を横に振る。
ダメ、アスランを連れてくるなんて…!
「…ふん、メインはそっちなんだよ。」
バタンッ
ガチャガチャ
男は部屋を出て鍵をしっかりとかけた。
足音が遠くなる…
『……っ…んっ』
涙がアイマスクに染み込む。
自由を奪われた私はかすかに聞こえるエンジン音に強い恐怖を感じてそのまま意識を失った。