ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第12章 遥かなる旅路
いつもならそろそろ帰ってくるはずの時間。
結局あれから寝付くことは出来ず、起きてアスランを待っていた。
しばらくすると角からハンナがこちらにやってきた。
『あ、ハンナ!アスランは?』
「はあ…伝えようと思って来てあげたのに、第一声がそれなの?」
『あ、ごめん』
「今日で最後だからって少し多めにお金渡されたらしいんだけど、アッシュったらその分働いていきますって今もまだ仕事してるの。」
『そうなんだ…まだ帰らないんだね。』
「ちょっと、なにその寂しそうな顔!アッシュはあんたの為にこの1ヶ月働いてたんだよ?!それなのにそんな顔するの失礼じゃん!」
『…えっ?私のため?』
「……あっ、なんでもない!…ちなみに仕事が終わったあとヒューゴのところで休んで、そのまま彼と買い物に行くから先に靴磨き始めててって。」
『わかった…伝えてくれてありがとう。』
ハンナはプイっと顔をそむけたまま何も言わずにそこに立っている。
『あの、ハンナ?』
「……アッシュが、早く帰れなくてごめんって。」
『…ふふ、うん。』
「なに笑ってんの?!…じゃ。」
ハンナは背を向けて歩いていった。
恋敵の私となんか話もしたくないはずなのに、きちんと伝えてくれたハンナ。
私は、なんだかそれが嬉しかった。
私のために働いてる…って言ってたけど、それはどういうことなんだろう。
でもこの1週間待ったんだ、変に色々考えないでアスランの口から聞けばいいよね。
それにしても、アスランはまだまだ帰って来ないのか…
もう寝付けそうにないし、私は溜まったゴミ捨てと昨日着替えた服を水道に洗いに行った。
水を飲みに来ていたペーターと会った。
「お、ユウコじゃん!おはよう!」
『ペーター、おはよう!早いね!』
「おう、暑いから喉乾いてさ。ユウコこそこんな早くに洗濯かよ?」
『うん!アスランが出てるからひとりだし、もう寝付けなくて。』
「そっか。まだ早いのにもうこんなに明るいし、暑くて寝れねーよな。もう8月か。」
『……8月…』
「どうかしたか?」
『え?あ、ううんなんでもない』
「じゃ俺行くわ、またなユウコ!」
8月…か。
アスランと私の誕生月だ。
去年は気付いた時にはお互い誕生日がとっくに過ぎていてなにも出来なかった。
今年こそ、お花を送ろう。