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ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH

第12章 遥かなる旅路


いつもの場所に帰るとそこにはハンナたちがいた。

「あ!帰ってきた!どこに行ってたんだ?」

「ちょっと色々話してた!…ハンナ、ごめんね?怪我してない?」

ハンナはずっと泣いていたらしく、ぐすっと涙を拭うとアスランに抱きついた。


『…!』

「ちょっと尻もちついたけど大丈夫…帰ってきてくれて良かった!」


「アッシュとユウコを困らせるなよ…俺たち行ってるからな!」

ハンナのグループの子たちはうんざりしたように自分たちのスペースへ戻って行った。

まだハンナがギュッと抱きついている。
さっきまで感じられた体温は私だけのものじゃない。
…ちょっと寂しいな。


アスランはスッと私に目線をやると、下にダランと垂れたままだった腕を上げてハンナの肩を優しく押した。


「ペーターたち行っちゃったよ?」

「…うん。」

「あ!それと、酒屋の積荷のことユウコに話したから。」

「えっ!?」


少し残念そうに眉を寄せてハンナは私を見た。

「ふたりだけの秘密だったのに…」

「ごめん、知らなかった!」

「ううん……またあとでね。」


ハンナはくるっと背を向けて去って行った。

アスランはすぐに私に体を向けると、近付いてきてギュッと私を抱き締めた。


「…さっき寂しそうな顔してた。」

『そんなこと、ないもん。』

私はボソッとそう言う。


「そう?…じゃ、僕が寂しかったからこうさせて。」

『……うん』


私も背中に腕を回し、ギュッと抱き返した。


ハンナのアスランに対する好意は、誰から見ても一目瞭然だ。

私の好意はどうなのだろう?
いつからなんてもう覚えていないくらいずっと前からアスランのことが好きで、手を繋いだり、ハグしたりも昔から当たり前のようにしてきた。

一緒にいることが当たり前のような距離だったから、ハンナのように好意をアピールしてこなかった…と思う。


でも最近の私は彼への好意を今までにないくらい意識している。
…キスして、なんて言ってしまうくらいには。

私よりも身長が高くなってからのハグは、ギュッてしたときの腕の位置が昔とは全然違っていて、やっぱり男の子なんだなと、ドキドキしてしまう。


照れて素直になれない私に、それを知ってか知らずかアスランはとても優しい。

アスランも私を好きになってくれたらいいのにな…。
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