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ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH

第12章 遥かなる旅路


アスランは体ごと私に向けて、ゆっくりと近付いてくる。

ヒューゴがしたみたいに、髪を耳にかける。
そしてこめかみあたりにそっと口付けた。


『…っ』

恥ずかしさでギュッと目を瞑ると、瞼にキスを落とされる。


スッと目を開けると、アスランは先程のギラッとした目ではなく少し潤んだ優しい目をしていた。


アスランは私の目を見つめたまま顔を近付けてくる。
私もつられるようにじっと見つめる。


アスランが一瞬ふふっと微笑んだかと思うと、唇に温かさを感じた。


「……………」
『ん………っ』


アスランとの初めてのキスはほんの一瞬だった。
だからこんなに近い距離で見つめ合うのは初めてだ。


10秒ほどキスをしていたかもしれない。

アスランはゆっくり唇を離すと、ギュッと抱き締めてくれた。


唇と唇を合わせるだけの幼いキスだが、私は心臓がバクバクしていてそれはアスランも同じだった。



「また、キスしちゃったね」
『…う、うん!』


「ユウコ、」

『なに?』

「僕、きみのこと……」


ブゥウウン


車が目の前を通り、声がかき消される。


『ごめん、もう1回言って?』


「…ううん、なんでもない!そろそろ帰ろうか。」

『ん?…うん!』


私たちは手を繋いで路地裏へ入る。










「…ほう、…アレはいいなァ。」


その一連を全て見られていたと知るのはまだもう少し先の話だった。
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