ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第2章 ナイトメアのはじまり
警察が到着するまでの間、部屋は私たちだけになった。
「ユウコ、ごめんね。ユウコにだけは嫌われたくなかった。僕、男にレイプされてるなんて絶対に知られたくなかった。汚い僕の体に触ってほしくなかった。…もう会えないと思った。」
『…アスランは汚くなんかない…それに私がアスランを嫌いになるなんて何があっても絶対にないよ…また会えて本当によかった。』
私たちは瞳を合わせる。
「ユウコ、こっちがキミのファーストキスだよ。間違えないでね。」
そう言ってアスランは私の唇にキスを落とす。
『…っ!じゃあ、アスランのファーストキスはこっちだからね!……んっ……おぼえた?』
今度は私からアスランの唇にキスをした。
「えへ…うん、おぼえた。忘れない。」
『私も間違えないし、忘れない、もう大丈夫。』
「…ダイジョウブ?」
『うん、大丈夫!日本の言葉でAll rightっていう意味なんだ。』
「へぇ、ダイジョウブ…ダイジョウブ」
アスランは大丈夫を気に入ったのか、何度も繰り返す。
まだまだ子供なはずの心を大人びさせるには十分すぎた、8歳の記憶。
この時私たちは、まだ知らなかった。
これが今後も、2人の人生で最低最悪の出来事になるのだと思っていた。
だが、本当のナイトメア《悪夢》は
ここからだった。