ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第12章 遥かなる旅路
「…っ!?…ユウコ、起きて!ユウコ!」
アスランは私の肩を揺すった。
私はアスランが何を考えているのかわからなかった。
体を起こしてチラッとアスランの顔を見ると、とても焦ったような顔をして私の涙を拭った。
そしてギュッと強く抱き締められる。
『…!…アス、ラン?』
「ユウコ、悪い夢を見てたんでしょ?…大丈夫だよ、僕が傍にいるからね。」
ポンポンと背中を撫でながらアスランはそう言った。
悪い夢…?
ああ…私が悪夢を見て泣いてると思ったのか…
傍に、いなかったじゃない。
私が寝ている間にハンナと会って、彼女のこともこんなふうに抱き締めているの?
…そう思うと今すぐ彼を突き放したいのに、やはりそんなことは出来なくて私はアスランの首に腕を回して抱き返した。
深呼吸すると、アスランの香りで肺が満たされる。
『……ずっと…傍に、いて?』
「うん、いるよ。大丈夫。」
……うそつき。
その日の昼間の記憶はほとんどなかった。
そして夕方靴磨きを終えて路地裏に戻ると、ハンナのグループがトランプをしていた。
ハンナのいるグループは男3人女1人の4人だった。
「よお、アッシュ!ユウコ!一緒にやろうぜ!」
「あ、うん!ちょっと荷物置いてくるよ!」
チラッとハンナを見ると私をじっと見つめていた。
ウェーブのかかるブロンドの髪に、青い目。
「ユウコ?荷物置きにいこう!」
私の手を握り、私たちのスペースに向かう。
「ごはんはあとでいいか!さ、トランプしに行こう?」
『…私はいいや。』
「なんで?あ、おなかすいた?先食べようか!」
『ううん、違う。アスラン行ってきなよ、私ここにいるから。』
「…じゃあ僕もいいや!」
アスランは腰を下ろして、荷物整理を始めた。
『なんで?行きたいんでしょ?行ってきたらいいじゃん!』
「…どうしたんだよ、ユウコ。そんなに大きな声を出して…」
私は天邪鬼なことを言っているとはわかっているのに、ハンナとアスランのことでモヤモヤして落ち着けなかった。