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ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH

第12章 遥かなる旅路


あれから私たちは、付近の路地裏で肩を寄せ合って寝るようになった。

路地裏にはストリートチルドレンが一定数いて、そのうちの数グループとは会話をしたり、誰かが拾ってきたトランプで遊ぶような仲になった。



昼間は変わらず、商店街の道を少しいったところにある通りで2人で靴磨きの仕事をした。
前にいたところと変わらず、声を掛けてくれる人がいて同じようにお金を稼ぐことが出来ている。



前と変わらない。
むしろ友達も出来たし、家はなくとも充実した生活を送れていた。





そんなある日の夜中、珍しく眠りが浅かったようでふと目が開いた。

まだ覚醒しきらない目をこすると、異変に気付いた。

隣にいるはずのアスランの姿がなかった。
トイレにでも行ったのかと思いしばらく起きて待っていたが帰ってこない。

…なにかあったのかな?

私はとても心配になって、商店街へ出て探し回るがどこにもいなかった。
大人しく元いた場所に戻り20分くらい経った時、角の向こうからアスランの声が聞こえた。


「ハンナ、今日もありがとう。」

私はゴロンと壁側を向いて横になり、寝たフリをした。

『…ハンナ?』

ハンナは路地裏で生活するようになって最初に仲良くなったグループにいる女の子だ。


「こちらこそ!最近リードしてくれるし、さすがアッシュだね!」
「まあ、もうすぐ1ヶ月になるからね、覚えてきたよ。」
「じゃあアッシュとこうやってデート出来るのもあと少しかあ…寂しいな。」
「あはは!じゃあハンナ、また明日ね。」


私に近付いてくるアスランの足音を背中で感じる。

もうすぐ1ヶ月……
デート……


アスランは夜中にハンナとデートするためにこっそり抜け出していたんだ。

1ヶ月も。



スッと私のすぐ近くにアスランが腰を下ろした。

ゆっくりと頭を撫でられる。

「…ただいま、ユウコ。」

眠っていると思っているのだろう。
とても優しい声だった。


ほかの女の子とデートしてきてすぐなのに…どうして…?


胸が苦しくなって、涙が溢れてくる。
堪えようとして肩が震えてしまう。

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