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ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH

第12章 遥かなる旅路


そうか、私たちのような子供には売ってくれないんだ…。

私たちは、しゅん…と肩を落とし背を向ける。




「ハァ!?おいっ!ちょっと待てって!!!!」

男は大層慌てたように私たちを呼び止めた。
そして、その男の両手にはザワークラウトが山盛りに乗ったホットドッグがひとつずつあった。



「俺はおまえらにこれを売らねえ!!金はいらねえって言いたかったんだよ!…俺のおごりだ!ほら、持ってけ!!」

「え、でも…」

「子供が遠慮すんじゃねえよ!!温かいうちに食えよな!うちのホットドッグはうめーから!ホットドッグデビューはうちの店で、最高だったっておまえらの孫の代まで語り継げよ!!」

『わあ…あったかい!ありがとう!!』
「お兄ちゃん、ありがとう!!」

「おう、いいってことよ。あんなにキラキラした目されたら商売どころじゃねえって話だ。…それにしてもアメリカンジョークが伝わらねえなんて焦ったぜ。…おまえら幸せになれよ!」



私たちは路地裏で生まれて初めてのホットドッグを食べた。
ソーセージはパリッと弾け、ザワークラウトとケチャップの酸味と肉汁が合わさって最高に美味しかった。

ひかえめにかけられたマスタードはやはりツンと辛く、2人で鼻をおさえる。




この街の大人たちは皆優しかった。


ここに連れてきてくれてご飯をご馳走してくれたヒューゴ。
初めての買い物の時レジでキャンディをくれた店員さん。
私たちに声をかけ、お金を稼がせてくれた靴磨きのお客さん。
そして、先程のホットドッグ屋の店員さん…



あれからもう少しで2年が経つけど、ヒューゴは元気にしているのかな。
今でもケープコッドに配達に行くのだろうか。


ヒューゴは悪い大人に気をつけろと言ってくれたけど、
この街の大人はみんな、本当にロックランドまで送り届けてくれるような心優しい人ばかりだったよ。
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