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ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH

第12章 遥かなる旅路


黙って私の手を引き、歩き続けるアスラン。

私たちは家と食料を失った。
お金だけはなんとか手元に残っているけど…
これからどうするんだろう、どこに向かっているんだろう。

それより、アスランのあの言葉の意味は…?

頭の中はパンク寸前、いやもうパンクしているのかもしれない。



公園を出て商店の立ち並ぶあたりへ出てきた。
この先はあまり来たことがなく、よく分からない。
それでも歩みを止めないアスランに声をかける。



『アスラン、…どこに行くの?』









「…どこに行こうね。」

『えっ?』



「ごめん……」



アスランはそういうと体をグラッと揺らした。


『…っ?!…アスラン?…アスラン!』


私は咄嗟に倒れそうになるアスランの肩に身を滑り込ませた。
危ない…地面に頭を打ってしまうところだった…。

自分よりも少し体の大きいアスランをなんとか支えて路地に入り、座らせた。


『アスラン、大丈夫?』



「……………」



『………えっ。』




彼は眠っていた。
あの一瞬で眠りについてしまったらしい。




こんな姿は初めて見た。
歩きながら寝てしまうなんて…




彼の寝顔を見つめる。



『綺麗…。』




ーー僕は、ユウコさえいてくれたらそれでいいんだ。その他に守りたいものなんて何もない。








私も同じ気持ちだよ。
アスランが傍にいてくれたら、私はもう他に何もいらない。
なんだって簡単に捨てられる。





体勢がキツイのか、アスランは身を小さく捩った。


ケープコッドを出たトラックの中でのことが頭に浮かぶ。


アスランの肩を優しく支えて、自分の太ももに彼の頭を乗せる。
アスランがしてくれたように、ブロンドを指ですきゆっくりと撫でた。



…あの時のアスランはどんなふうに眠る私を見ていたのかな。


今の私はどんなに抑えようとしても上がる口角と、下がる目尻を元には戻せない。







『ありがとう、アスラン…おやすみ。』



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