ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第12章 遥かなる旅路
「昨日僕たちの後をつけてたよね。」
「「「「?!」」」」
「……だ、だったらなんだよ!!」
「ううん、昨日僕らが小屋にいる時には入ってこなかったから、わざわざ留守中を狙って入ったんだなあと思って。」
「俺たちが外にいるってわかってたのか…?」
「うん。」
『え…?そ、そうだったの!?』
「いつ入ってくるのかなと思ってたんだ。…まあ、きみらには無理だったんだろうけど。」
「…何が言いたいんだよ!」
「きみらみたいに臆病で卑怯なヤツらには乗り込んでくることなんて出来ないと思った…って言ったらわかる?」
「なんだと!?俺たちが臆病で卑怯!?」
「ああ、そう言ったんだよ。」
あくまで冷静に敵意を向け続けるアスランの後ろ姿を私はただ見つめることしか出来なかった。
「…で?どうしたいの?きみらはここに住みたいの?それともその後ろに隠してる缶詰を盗みにきただけ?」
ひとりの少年の肩がビクッと震え、地面にゴロゴロと缶詰を落とした。
「おいバカ!」
「わ、悪い。」
『あ…それ!私たちのだよ!返して!!』
「うるせーな!どうせ盗んだ物だろ!?」
『違うよ!ちゃんと買ったの!!』
「もういいよ、ユウコ。行こう。」
『…え?』
「それ、そんなに欲しいならあげる。あと小屋も出ていく。」
『……アスラン?』
アスランは彼らに背を向けて私の隣に並んだ。
「なんだよ!おまえ逃げんのかよ!!」
「…なに?まだなにか欲しい?あ…お金?」
アスランは荷物をゴソゴソと漁りお金の入った袋を取り出す。
『あっ…アスラン、それは…』
「…い、いらねえよ!!!馬鹿にすんなよ!!」
アスランは少年たちを一瞥すると背を向けた。
「まてよ!」
その声はずっと後ろに隠れていたあの少年が発したものだった。
「…なんで、食料とか家とか……それに金まで渡そうとして…なんのつもりだよ、どうしてそこまで出来るんだよ…おまえらはどうすんだよ!」
「…お金はまた稼げばいいし、そしたらごはんも買えるし、家なんかなくたって生きていける。…僕は、ユウコさえいてくれたらそれでいいんだ。その他に守りたいものなんて何もない。」
アスランは私の手を握って歩き始めた。