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ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH

第12章 遥かなる旅路


それから毎日同じような生活を続け、今日が何月何日なのかある時ふと気になり街の商店のカレンダーや道端に落ちている新聞から情報を得た。

私たちは知らない間に9歳の誕生日を半年もすぎていた。

着てきた洋服もボロボロになって、ゴミ袋にまとめて捨てられている衣類を漁りサイズが合うものを拾った。
アスランは前までのサイズでは合わなくなってきて、少し大きめのものを身につけた。

目線が少し高くなったアスランは、今まで以上に私に優しく接してくれるようになった。



あんなにたくさんあったお金が少なくなってきて、底をつく前に動こうとアスランが提案したのは靴磨きだった。
街中で、私たちと同じような年齢の子がこうやってお金を稼いでいるところを見かけたらしい。


アスランが以前見かけたままに、道の端で並んで座っていると私たちの顔を見て、「お願いしようか」と声を掛けてくれる人が何人もいた。

私たちは喜んで一生懸命靴を磨いた。

いくら?と聞かれれば50セントと答える。
それなのにだいたいの人は1ドルを握らせてくれた。
時には10ドルをグイッと押し付けてくる人もいた。



ふと、近場で同じように靴磨きをはじめた少年が目に入る。
必死に道へ出て声を掛けている。そこへ男がやって来て、乱暴に靴をダンッと置いた。

「早くしろ!」
「は、はい」

その子が靴を磨き終えると、男は10セントを投げつけた。

「あの…50セント、です…」
「ああ?!お前こんな程度の仕事で50セントも取るのか!?お前には10セントでも多いくらいだ!」

「…でも、」

その子は私たちをチラッと見る。
一連の流れを見ていた私は目が合ってしまい、バッとそらす。

「お前…、あの子たちと自分が同じ金額を取れると本気で思っているのかよ?…ハッ、自分のツラをよ~く見てから言うんだな!」

そう吐き捨て男は去っていった。

全て聞こえていた。
すぐ隣でまたひとりの靴を磨き終えたアスランはにこやかに5ドルを受け取っていた。


「ユウコ!あの人5ドルもくれた!…あれ、どうしたの?」

『え、あっ、ううん…やったね!』


ちらっと先程の彼を見ると、すごい剣幕で私たちを睨みつけて走り去っていった。

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