ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第12章 遥かなる旅路
私たちは顔を見合わせた。
初めての街で、これからふたりで生きていくんだ。
全くあてもないこの旅は不安なことばかりだけど、私はとても嬉しかった。
両親との関係は偽物だったけど、私とアスランの関係は本物だと言いきれる。
死の淵に立たされた経験を共にして、しかも彼は身を呈して私を守ってくれた。
その事実が私を強く支えてくれた。
心に芽生えた幼い恋心もさらに成長を続けている。
私たちならきっと大丈夫。
ふたりなら、ただそれだけで…
「行こうか。」
『…うん!』
私たちはとりあえずこの近辺の地理を把握するために歩き出す。
しばらく街をまわりながら歩いていると、公園を見つけた。
『あ!ここに公園がある!』
「ほんとだ!…広いね!」
その公園は奥行きが広く、入口からは先がどうなっているか見えない程だった。
遊具を横目に歩き進めると、そこは小高い丘になっていてさらにその先には湖が広がっていた。
「わあ…綺麗。」
『本当だ…、見て!あそこに小屋がある!』
そこには木々が立ち並ぶ中にひっそりと佇む小さな小屋があった。
私たちは小屋に駆け寄る。
ギィ
小屋のドアを開けると、ロープやマット、古い看板が乱雑に置いてあった。
公園内の備品の物置らしい。
しばらく人が立ち入った形跡はない。
私たちはここをとりあえずの拠点にすることに決めた。