ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第12章 遥かなる旅路
「あれ?ついたのかな…」
『停まったね。』
私たちは息をひそめていると、運転席のドアが開く音がした。そしてタッタッと足音が荷台に近づいてくる。
ギュッと手を握りながら様子を伺っていると、
バッと荷台の布が開いた。
「『ぎゃああ!!』」
「うわぁああああっ!!!」
運転していたと思われる20代くらいの男は、私たちの声に驚いて大きな声をあげた。
「な、なな、なんだお前たち!!いつから乗ってたんだ!?」
「ケープコッド、から…」
「はあ!?ケープコッドっつったら停まったの真夜中じゃねえか?なんで!?…ってこんな状況じゃ俺が犯罪者になっちまうじゃねえかよ…、おい親に電話してやっから番号言えよ。」
男は携帯を取り出す。
『だめ!!』
「はっ!?なんで!?」
「僕たち家を出てきてるんだ、もう絶対に帰らない!」
「…家出か?もう朝だぞ?心配してんじゃねーの?」
『心配なんかしてないよ…私いらない子なんだもん。』
「ん?なんだよワケありか…?ふぅ~…まあいいや!…ずっと乗ってて喉乾いたろ?なんか買ってきてやるよ。」
私たちは呆気にとられる。
その男は、無理に家に帰そうとか警察に言おうとかそういう気が全く無さそうだった。
荷台を降りると、そこは見たことのない景色だった。
男は自販機でコーヒーとオレンジジュース2本を買うとこちらに戻ってきた。
「ほら、やるよ。」
私たちはお礼を言って飲み始める。
男もカシュッと缶を開けてコーヒーを飲んだ。
「お前ら歳は?」
「8歳、です…」
「へえ、8歳で家出ねえ…、絶対に帰らねー!とか、いらない子だー!とか…まあただの家出じゃねえんだろうなァ…。見たとこ兄弟じゃないだろうけど、どっちもいいとこの子なんだろ?」
『えっ?』
「育ち良さそうな顔してんじゃん。美少年と美少女の代名詞みてえな。」
「……えっ」
「えってなんだよ!…で?これからどうする気なんだ?ニューヨーク行ってふたりでやっていけんのかよ。」
『ニューヨーク…?ミドルタウンじゃなくて?』
「ミドルタウン?なんで?」
『お酒の上の紙に、ミドルタウンって』
「あぁ!あれ古いヤツな。新しいのはこっち。」
ポケットから発注用紙を取り出す。
私たちが目を合わせて驚いていると、
「行き先は、ニューヨークだぜ。」
と男は言った。