ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第12章 遥かなる旅路
アスランの家を出る時に午前1時40分だった。
朝になって、私の部屋を覗きにくれば異変に気付いて探し始めるかもしれない。
そうなったとして、簡単に見つからないような位置まで遠くにいたい。
まだまだ見慣れた風景が続くこの街をただ歩き続ける。
途中川の水で喉を潤していると、1台のトラックが近くの商店に停まった。
私たちは草の影に隠れながら、トラックを見る。
運転席から出てくる様子が無いので、荷物の積み下ろしではなく時間潰しか休憩だなと思った。
「…見て、トラックの荷台の紐緩んでる。」
『ほんとだ。…あれ、乗れるかな。』
「僕も同じこと考えてた!…行こう。」
再びアスランは私の手を握ると走り出した。
音を立てないようにトラックに近づき、荷台を覗く。
そこにはお酒の瓶がケースに入って積まれていた。
2人が入れるスペースは十分にある。
私たちはアイコンタクトを取ると、足をかけてよじ登った。私が苦戦していると先に登ったアスランが腕を引っ張ってくれて無事に荷台に乗ることが出来た。
程なくしてエンジンがかかり、トラックは出発した。
「これ、どこ行きなんだろ。」
『う~ん…えっと…Middletown…』
私は瓶の上に乱雑に乗せられた発注用紙を読み上げる。
「コネチカット州の?」
『うん、コネチカット州のミドルタウンみたい。』
「それじゃあ、つく頃には朝だね!」
そこまで遠くに行ければ、あとはゆっくりどこかいい所を探せばいい。
少しホッとしたら眠くなってきた。
『ふぁ~あ…』
「ユウコ、眠い?眠っていてもいいよ。」
『ん~……』
私はアスランの肩にもたれて眠ってしまった。
それからどれくらい眠っていたのだろう。
夢の中で心地よいリズムで頭を撫でられている感覚がしてその手に擦り寄ると、目が覚めた。
「…あっ、起きた。」
『ん……アスラン…』
だんだんと意識がハッキリしてきた。
私はアスランの膝を枕に眠っていたらしく飛び起きる。
隙間から朝日がさしていた。
『…ごめん、膝で…!それにたくさん寝ちゃった…』
「いいよ、体勢が辛そうだったから僕がそうしたんだ。」
『ありがとう。アスランも寝る?』
「ううん、僕もユウコが寝てる間に少し眠ったから大丈夫だよ。」
すると、車が突然停まった。