ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第12章 遥かなる旅路
ベッドの上で私は震えた。
パパとママにとって、私はやっぱり他人だった。
パッとすぐに切れるような簡単な繋がりだった。
明日私は捨てられる。
もうお前はいらない、とそう言われることがただただ怖かった。
そんな私の頭の中で声がする。
ーー捨てられる前に、捨てちゃえば?
え?私が…捨てる?
ーーそうだよ、そしたら捨てられずに済むよ。
私は静かに立ち上がり、部屋を見渡す。
ここを出よう。
この夜のうちに。
それからしばらくして
両親が寝室に入った音がした。
この部屋には私が両親に愛されていたはずの、温もりが沢山詰まっていた。
でもそれは全て偽りだ。
ここから持って行くものは何も無い。
…ふと、机の引き出しに手をやる。
その中には封筒が入っていた。
これは、あの事件の男が私たちにばらまいたお金だった。
警察が1回は回収したもののアスランのパパが「それはこいつらの金だ」と取り返し、半額を私のパパに手渡した。
その後パパは、「何か困った時に使いなさい」と私にそのまま渡したのだった。
『…なにか、困ったとき……』
私はその封筒をグッと掴みポケットに入れた。
そして自分の部屋を出て、リビングの大きな窓を開けた。
『サヨナラ、ママ……パパ。』
そう呟いて、
私は自ら家族を捨てた。
時間にして午前1時。
街灯もほぼなくいつもは真っ暗なこの場所も今日は大きな月の光が明るく見守っていた。
ふと目に入るアスランの家。
アスランのパパは女の人と違う家に住んでいて、グリフがここを離れてからはひとりだった。
子供ながらにアスランを平気で1人にさせるその女の人が許せなかった。
会いたいな…
あれ以来会えていない彼を思って家を見るが、もちろん部屋の明かりは全て消えていた。
諦めて背を向けて歩き出す。
家から持って出るものなんて何も無かったけれど、
せめて、彼との思い出だけは…。
慣れた足取りであの場所へ向かう。
何も言わずにここを出るんだ、
木の棒で地面にメッセージを残そう。
そんなことを考えながら公園にたどり着くと、
いつものブランコにありえない姿を見つけた。
『…えっ、なんで…アス、ラン?』
私はあの時のように声もかけずにその後ろ姿に駆け寄った。