ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第11章 放たれたネコ
《アッシュside》
「…え?…レ、イ……7歳…?」
「あぁ、俺昔野球やってたんだよ。その時の指導者にな。…選手のサイン入りグローブを見せてやるって言われて家についてったら俺をベッドに放り投げて服を破かれた。」
「そんな……、車停めていいかな?」
運転しながら聞ける話じゃないと判断したのか、エイジは長時間停めても問題なさそうな路地に入ってエンジンを切った。
「その、キミが話してくれるなら…聞かせて。」
「あぁ。……ファーストキスの話だけど、そんな綺麗なもんじゃなかったんだよ。まあレイプされてんだから当たり前だけど。その日家に帰ると、親父はすぐに俺に何が起こったのかわかったらしく、警察に連れていかれた。」
俺は嫌だった。
こんな小さな街だ、噂にでもなったら…
ユウコに知られてしまうのが、
とてつもなく怖かった。
「…最初、警察は信じてくれなかった。どこかでケンカしてきたんじゃないか?ってな。そのあと診察台に乗せられて、服を脱がされて……流れ出る精液を見てようやく信じてくれたんだ。今度はそのコーチが相手だと信じようとしなかった…その辺じゃ英雄みたいな扱いをされてたヤツだったからな…。俺が誰かを誘惑したんじゃないかとまで言われたよ。」
「…なんだそれ、7歳の子供なのに…」
「ああ、ほんとそうだ。家に帰ると親父に、またお前に何かしてきたらその時は黙って抱かせる代わりに金をもらえって言われてね…もうそうするしかなかった。俺は心身共にボロボロだったんだ…毎日会っていたユウコにも会えなくなった。俺のことを公園で待つユウコをこっそり見に行ったことはあったけどな…」
「…じゃあそのことを、彼女は知らないんだね?」
「いやそれが、最悪の形で知られることになるんだよ…」
「え?」
「俺は、毎日雨の日も公園で待ち続けるユウコに1度だけ会いに行ったんだ…『もう会わない』って伝えるために。そしたらその次の日、ユウコは俺を探して色々なところに行ってくれたらしい…その途中で、そいつの家を訪ねる俺を偶然見つけて…。そのまま、中で服を破かれキスされる俺を、窓の外からユウコは見てた…」
「…………あぁ…」
「それだけなら…よかったんだ……。」
それだけなら。