ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第11章 放たれたネコ
《アッシュside》
「アッシュ!!よかったね、…おめでとう!」
俺の姿を見た途端、勢いよく立ち上がってこちらにやってくるエイジ。
「ああ、お前にも世話になったな…エイジ。」
「とりあえず、おめでとう…だな。だがお前にはこれからたーっぷり聞きたいことがあるぞ。警部もお待ちかねだ。」
チャーリーがそう言う。
久しぶりの自由だ。
自分の意思で、外を歩ける。
「よかったね、早く出られて。」
「…ああ。」
「実はユリにはキミが保釈されたって伝えていないんだ。きちんと安全な場所で会って欲しいと思ったから。」
「…そうだな。」
エイジに聞きたいことは山ほどある。
それは落ち着いてからでもいいだろう。
「ねえ、チャーリー。頼みがあるんだけどさ。」
俺は努めて明るく話し始めた。
「ん?なんだあらたまって。」
「ジェンキンスの所に行く前に、寄って欲しいところがあって。」
「ユリのところか?」
「…いや、実は俺、今まで黙ってたんだけど兄弟がいるんだ。兄さんなんだけど…」
あからさまに3人は顔を強ばらせた。
「あ、ああ…それは、知らなかった。」
それは優しさのつもりなのか?
「きっと心配してると思うから、会ってきたいんだ。」
「……アッシュ、あのなアッシュ…だめだ。俺は隠し事はできん。いずれ分かる事だ…はっきりいっていい知らせじゃないんだ。」
…知ってるよ。
兄貴はもう…
「…何か、あったのか?」
あぁ…苦しい。
今は明らかに落ち込んだフリをしているとはいえ、何度聞いても事実を突きつけられるのはとても辛い。
それと同時にはらわたが煮えくり返る。
ディノの野郎…絶対に許さない。
発進した車の中で俺は窓に顔を向けていた。
「気を落とすな、とはとても言えないが…」
「アッシュごめん…僕がドジであとをつけられたりしたから…」
「おい、どうした?」
「…気分が、悪い…」
「大丈夫か?少し休んでいくか…?」
チャーリーはそう言って車を路肩に停めると、助手席のドアを開けた。
「さあ、いいか?俺に捕まって……」
ここからだ。
ーーー集中しろ。