ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第11章 放たれたネコ
朝6時30分、少し早くに目が覚めた私はコーヒーを飲んでいた。
最近あまり食欲がなくて、コーヒーで過ごすことが増えていたけど見かねたエイジがせめて朝食は一緒にとろうと提案してくれた。
気にかけてくれてありがたいような申し訳ないような…でもやっぱり嬉しくて甘えることにした。
コンコンコン
時計を見るとちょうど7時。
「ユウコ~、おはよう!起きてる~?」
エイジがドア越しに声を掛けてくる。
ガチャ、と開けるとにっこり笑っておはようと言われた。
「わあ、コーヒーのいい香り。飲み終わるの待とうか?」
『ううん、もう飲み終わったとこ。帰ったらエイジにもいれてあげるよ!』
「あ、それなんだけど…今日は朝食のあと伊部さんとすぐに出なくちゃいけないんだ。」
『そうなんだ、朝早くにどこに行くの?』
「え~っと、それはまだ言えないんだけど…キミはきっととても喜ぶよ!」
『私が喜ぶ?なんだろう?』
「あ~!僕おなかペコペコ!ユウコ、早く行こう!」
わざとらしくおなかを撫でるとエイジは歩き出してしまった。
追いかけるように隣に並び、アパートを出る。
「昨日飲んだスープが美味しかったから今日もまたそこに行っても良い?」
『うん、もちろん良いよ!』
エイジは昨日のお店が気に入ったらしい。確かにとても美味しかった。
店の前に着くと、見慣れた頭の男がいた。
『えっ、ショーター?偶然、じゃあないのかな?』
「うん、僕が呼んだんだ。今日は彼も一緒に。」
「よっ!ユウコ、エイジ。俺腹減ったわ早く入ろうぜ!」
私たちはテラス席に座って朝食をとった。
「あっ!いっけない、もうこんな時間だ!僕行ってくるよ!」
「おう、エイジ頼んだぜ。」
「ああ、キミもな。じゃあね、ユウコ!」
そう言ってエイジは走って行ってしまった。
『ショーターはエイジたちがどこに行くか知ってる感じだね?』
「ああ、まーな。あいつらが帰ってくるまではこの前の小屋の所で待ってよーぜ。」
『エイジもあの場所を知ってるの?』
「あ~、うん…そうだな、そんな感じ。」
ちょっとおかしなショーターに疑問はあったが、特に気にせず私たちは先日の小屋に同じようにバイクで向かった。