ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第10章 檻の中のLynx
《マックスside》
俺が部屋に戻ると、ベッドに座って何かを考えているようだった。
「もう支度はできたのか?」
「支度なんか別にないよ…」
あれっ、やけにしおらしいな。
こりゃ、ジョージの言う通り俺が勘ぐり過ぎたか。
やっぱりグリフィンの死がかなりショックだったか。
そらそうだよな…いくら強かなこいつでも。
「ここから出たら俺はもう一度バナナフィッシュを追ってみるつもりだよ。お前の教えてくれた話もあるしな。」
「ムダだな」
「あ?」
なんだ、どうしたこいつ。
「あんたには、ムリだよ。」
鋭い目をどこかに向けて立ち上がった。
「ディノのじじいのことは俺がよーく知ってる。イヤって言う程な。」
お前…
「おーーい!アッシュ、迎えがきたってよ!」
「じゃあな、おっさん。色々世話ンなったな。」
…………
俺は頭の中に色んなことが浮かんで、
まとまらず立ち尽くしていた。
ひとつ、ある考えが浮かんだ。
いや、もしそうだとしたらまずい。
アッシュ…お前は、
ーーーまさか!
俺は面会ホールに走り出した。
「ジョージ!ジョージ!!アッシュは?」
「あ?今ディンキンソン刑事が迎えに来て出ていったところだが。」
「…しまった!俺は…俺は、言っちまったんだ!!ヤツの兄貴がディノに殺されたってことを!ヤツは復讐する気だ!」
「な、なんだと!?そんな大事なことなんで今まで言わなかったんだ!!このバカ!!」
「ああ、そうさ、バカさ!!バカでもいいからヤツを連れ戻せ!!…ヤツは何かをやらかす!止めろ!!…あいつ、やっぱりネコ被ってやがったんだ!!」
ジョージは、重そうな体を揺らしながら走っていった。
俺はバカだ…。
あのことは言うなと口止めされていたんだった。
でも…言っちまったことは後悔していない。
あいつはグリフィンの弟なんだから。