ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第10章 檻の中のLynx
《マックスside》
「アッシュ・リンクス?」
「ええ。」
なんだァ?ええ、って。
俺はお前のそんな淑やかな言葉遣い聞いた事ねえぞ。
アッシュの保釈が認められたということで、俺も同席している。
「わたしは君の弁護を引き受けることになったジョージ・スコットだ。マックスとは高校からの友人なんだ。…これは君の保釈許可証だ。」
保釈についての注意点や条件を話しているが、ヤツの顔はこれまでに見たことがないくらいしおらしい。
「OK?…ではここにサインを。」
「分かりました。」
「……うむ、いいだろう。これで君は条件つきで自由だ。おめでとう、アッシュ。」
握手を求めるとニコッと笑って応えやがった。
「ありがとうございます、Mr.スコット」
「ああ、じゃあ迎えが来るまで荷物の整理でもしておいで。」
アッシュは部屋に向かって歩き始めた。
「なんだ、マックス。素直で大人しくていい子じゃないか!おまえの話とえらい違いだな。それになかなか綺麗な子だし、あれなら判事や陪審員のウケもいい。この裁判は案外ラクだぞ。」
「バーカ、あれがヤツの手なんだよ…あのヤロウ、とりあえずお前を味方につけた方が得とふんで演技したんだ。俺も最初あの外見に騙されてデコに傷を作った。」
ここっと額を指さす。
「あの性悪ネコはな、自分の見てくれがカワイイってこと十分わかってんだ。どう見たってヤツが不良少年のボスだなんて誰にも分かりゃしない。それなりの格好をすれば育ちのいい坊ちゃんで通るツラだ。不良少年のボスにしたら不利に見えることを、ヤツは逆手にとって利用してるのさ。相手を油断させるために。…あの美少年ヅラでな!」
ふふんと言い切ってやると、目の前の友人は大層寂しそうな顔で「お前ムショに入って性格が悪くなったな」と言った。
そのあと、ムッとした顔をして
「相手は不幸な境遇で犯罪の濡れ衣まで着せられた、まだ17歳の少年なんだぞ!」
…あーあ、騙されてやんの。
「とにかく…あいつはそんなしおらしいタマじゃねえんだよ。俺はヤツと2ヶ月も一緒に暮らしたんだからな…まあ、恋愛に関してはピュアだってことはわかったが。」
「あ?…悪い、今なんか言ったか?」
アッシュの書類に自分のサインを書いていたらしい友人は、パッと顔をあげてそう言った。