ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第10章 檻の中のLynx
《英二side》
「ほんとですか?ほんとにアッシュは出てこられるんですか!?」
「うん、保釈が認められたんだ。ジェンキンス警部が頑張ってくれたらしい。」
アッシュが刑務所から出てこられることは本当に嬉しい。…でも、
「そしたら、アッシュに兄さんのこと言わなきゃいけませんね…」
「俺から言うよ。」
「…いいえ、僕が。僕はその場に居合わせたし…、ユウコから伝えさせるなんてことは出来ないし…。」
「ああ…わかった、でも英ちゃんこれが最後だよ。アッシュを警部の元へ送り届けたら、その足で空港に向かうんだ。いいね?」
「…はい。」
その後の話し合いで、ユウコにはアッシュの保釈が決まったことを黙っていることになった。
今は緊張の糸が張り詰めたまま警戒を続けているけど、それが油断に繋がって、どこかでオーサーの一味に捕えられることになったら…ということだ。
本当は1番に伝えてあげるべきだと分かっているけど、ごめんよ。
アッシュがちゃんと刑務所から出てきて、それから2人の安全が約束された場所で会うのが最善だと判断したんだ。
でも、アッシュの保釈を見届けたら僕は日本に帰る。
だから2人が久々の再会を喜ぶ姿は見ることが出来ない。
それが少し心残りだな。
欲を言えば、2人が幸せそうに笑うところまで見たかったけど…それは日本から応援することにしよう。
チャーリーに手紙を書いて近況を聞いてやろうかな?
あぁ、でも良かった。
無事に彼は出てこられるんだ。