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ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH

第10章 檻の中のLynx


《アッシュside》

その晩も、周りの部屋からはいつも通りイビキが響いていた。

…グリフが死んだ。
そう考えると、目を瞑る気にもなれずベッドに横になりながら薄汚れた天井をじっと眺めていた。

ベッドの下でガタッと音がするので目をやると、

「…起きてるか?」

とマックスが声を掛けてきた。

「見りゃわかるだろ…」
「看守にワイロをやってお目こぼしに預かったヤツだ。上等のバーボンだぜ。飲むか?」

「いらねえ」

「そうか…じゃあ勝手にやらしてもらうぜ」

マックスはそう言って酒を煽ると、目を伏せる。

「…俺には悲しむ権利がある。お前がどう思おうと構わん。俺とグリフは友達だったんだ。…あの胸クソ悪い泥沼でな…、お前にわかるか?アメリカは無理矢理船を出させておいて、雲行きが怪しくなると放り出すようなマネをしたんだ。…俺たちは後始末をさせられたんだ。足手まといになる子供を殺した母親、強姦されて死んだ女の子、死体の始末も俺たちの重要な仕事さ。…グリフィンは耐えられずに薬の力を借りたんだろう…弱い心を補おうとしてね。弱さはヤツの責任だが…いや、もしかしたらヤツだけがまともだったのかもしれないが……」




俺はベッドを抜け梯子を降りた。


ふっと、後ろを振り返るマックス。

「いつ降りてきたんだ…足音を立てないヤツだな…。まるで名前の通りネコだぜ。」

俺の手に握られるフォークに目をやると、悲しそうな顔で笑った。

「いいぜ、お前の好きにしな…俺も少し疲れた…あいつが死んだって聞いた時、俺もガックリきちまった。もう一度会いたかったな…たとえ俺だってことがわからなくなっていても。」


…なんだよおっさん。
俺は今持つバナナフィッシュについての情報を話した。

「ーーおまえ、何故それを…俺に話す?」


「……わからない。」

ああ、声が震えている。
そう他人事のように思った。

「…俺にもわからない…ッ…」

おっさんの前で、泣きたいわけないはずなのに…
涙が次から次へと溢れて流れる。

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