ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第10章 檻の中のLynx
《アッシュside》
ある日おっさんが会わせたいヤツがいると言って俺の腕を引っ張った。
聞けばそれは弁護士で、保釈申請をしろという話だった。
俺の事なんて知ったこっちゃねえくせに…。
そこまで俺におせっかいをやくのは「罪の意識なのか」と言ってやったら、目を見開いて俺に背を向けた。
俺は部屋のベッドでおっさんの資料ノートに目をやる。もう何度も目を通したが、つい無意識に手に取ってしまう。
「おーい、アッシュ・リンクス!アッシュはいるかァ?」
部屋に男が入ってくる。
「何?」
「ロボが呼んでるぜ。」
「おっさんが?おっさんはさっき面会の…」
…そういうことか。
この呼び出し主はおっさんじゃない。
「…どこにいるって?」
「工房だってよ」
「わかった、サンキュー」
そう言って俺は工房に向かう。
警戒しつつ中に入ると、案の定木の棒が俺めがけて振り下ろされる。咄嗟にテーブルを盾に躱した。
「よう、ハニー。残念だがお前のお宝はボスの元に戻ったぜ」
またあの男どもだ。
…こいつらがディノの手下だったのかよ。
アレがディノの元にって…エイジは無事なのか…?
「…そんならもう用はねえだろ」
「そうはいかねえ、裏切り者にはたっぷりお灸をすえろってボスの命令なんでな…」
ドガッ
「…っ…つァ」
腹を蹴られ痛みでうずくまる。
「ボスのお気に入りだったんだろ?何故裏切った?ボスにゃ子供がいねえ、上手くすりゃあ養子にでもおさまっておもしれぇことがいくらでも出来たのに。」
「ハッ…おもしれぇこと?笑わせるぜ…ッ…麻薬の取引やコールガールの上前はねるののどこがおもしれえん…っ!」
言い終わる前にまた思い切り蹴られた。
「口の減らねえガキだな…」
腕で俺を壁に追いやり、そのまま首を締め上げられる
「…ッあ…」
「…楽しもうぜ、あの日みたいにな…」
男が服を脱ごうとした時、俺は前に食堂で手に入れたフォークを男の首筋にあてた。
「…あの時1回きりだと言ったはずだ。あんたが絞め殺すのと、俺が首を掻っ切るの…どっちが早いと思う?」
「?!」
「…ディノに言え。ーー俺をここから出せと。…さもないとサツに全部喋っちまうってな。」