ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第10章 檻の中のLynx
そのあと、診療所の電話が鳴った。
私が思わず出ようとするとショーターに止められる。
「出ねえ方がいいだろ」
切れたと思ったらまた掛かってくる。
それが3度程続いた。
そしてまた鳴る。
『…やっぱり出るよ。ーーHello?』
「!…良かった、出ねえかと思った!俺だ、メレディスだ。」
『…ドクター?!グリフに何かあったんですか?!』
「やっぱり大きな病院へ運ぶのは、組織にバレる可能性がある。アッシュがムショにいる今…それはあまりに危険だと思ってな。事情を理解してくれそうなヤツの病院へ来ている。場所はーーー」
…ガチャ
「なんだって?」
『グリフを大きい病院に搬送するにはリスクがあるから、ドクターの知り合いの病院にいるって。今から行こう。』
「そうか、急ごう。」
「…僕、伊部さんに連絡してもいいかな?丸一日黙って出てきてるんだ、ユウコもここにいるしきっと心配してる。」
『あ、すっかり忘れてた…』
「このこと、伊部さんにも伝えた方がいいと思うから僕は伊部さんと合流してから向かうよ。住所、連絡しておいてもらえる?」
『うん、分かった。また後で。くれぐれも気をつけて。』
エイジが頷いて、診療所を出ていく。
私たちもすぐに出た。
教えられた場所につき、ココンコンコン…とドアをリズミカルに指定された回数ノックする。
「ああ、来たか。」
『ドクター、グリフは?』
「こっちだ。」
中に入ると胸に包帯を巻かれ、輸血を受けながらグリフが寝ていた。
『!…グリフ、グリフ!私だよ、ユウコだよ!』
「君がユウコだね?彼には最大限の手当を施したよ。…まだ目を覚ましていないが。」
『あ……ありがとうございます…』
「アッシュに兄貴がいたなんてな…俺は全く知らなかったぜ。…似てるっちゃ似てる。」
『しばらく意識がハッキリしてなかったから、顔色があまり良くないんだけど…私の記憶にあるグリフは笑顔がアッシュとそっくりで、ほんとに優しいお兄ちゃんだったんだよ。』
「…そうか」