ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第2章 ナイトメアのはじまり
「ユウコ…!」
投げられた勢いでベッドの上でアスランにぶつかると、心配そうな顔をこちらに向けて名前を呼ばれる。その声に顔を上げるとアスランはゴソゴソと私を後ろに隠し、男を見た。
「お願い、ユウコには何もしないで」
「おいアッシュ、一丁前にガールフレンドを守っているのか?いつもは俺の下で好きなようにされているお人形さんのくせにな」
ニヤリと笑いながら馬鹿にした口調でそう言う。
まるで私を背中側で抱き締めるように回るアスランの震える腕。昨日私を振り払い拒絶したその腕が今は離すまいと必死に背に庇う。こんな状況なのに、それがたまらなく嬉しい。ここまで強くアスランの体温を感じるのは初めてだった。
「ブロンドにグリーンアイの美少年と東洋の美少女か、こりゃあいつもの3倍払っても損はないな」
言いながら戸棚を開け、ガサっと何かを掴んだかと思うと私たちに投げ付けた。
ハラリハラリと降ってきた何かを見る
『…お金?』
「ああ、そうだよ。ユウコ、教えてあげよう。君のボーイフレンドは実に悪い子なんだ。私を誘惑し、いけないことをして金を稼いでいる。そして今日はこんなに美しい大切なガールフレンドまでもを私にと差し出してきた。」
先程外から見えたこと、今目の前の男が言っていることをまだ8歳の子供が理解するなんて難しい。私には全てが未知の事だった。
ただ目の前のアスランの背中はその全てを理解し、震えているのだとわかる。
「…っ…やめて」
「君は今その金を受け取ったね?だからほら、ユウコは今からその金に見合うような私だけの淫らなお人形さんになるんだよ、…さぁこっちにこい」
男がアスランの背の私に手を伸ばす。
「…ユウコにさわるなっ!!」
男に勢いよく飛びかかった時、アスランのズボンから何かがカチャンと音を立てて落ちた。