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文スト夢短篇集

第1章 いのち短し恋せよ乙女


お昼を食べ終え、午後はショッピングを楽しむことにした。サンマルコ広場を囲む回廊には巴里のパサージュよろしく、色とりどりのヴェネツィアン硝子の店やお土産屋さんが並んでいる。そこで色々と首領達へのお土産を見繕っていたが、想像通り彼はこういう事は苦手なようで、店の外で本を片手に待っている。
ふととあるお土産屋さんで、イニシャル入りのレースのハンカチを見つけた。私はたぶん自身のために土産物を買わないであろう彼に、こっそりこれをプレゼントする為、購入した。

ある程度買い物は終わったが、異国の雑踏の魅惑的な雰囲気についつい私達は何を買うでもなく、店先を覗いたりして楽しんでいた。
ふとある店に私は心を引かれてしまった。それはカーニヴァルの貸衣装の店だった。ルネサンスからロココにかけての豪華なドレスや妖しげな雰囲気を宿した華麗な仮面が所狭しと飾られている。恍惚として見とれていると少し先を歩いていた彼が戻ってきた。
「雑踏ではぐれたら、探すのが大変だろう。何だ?この店が気になるのか?全く…。」
少し呆れて、そしてまた言葉を続けて、
「気になる店があるなら、僕の事は気にせず言えば良ものを。ふん、それにしても貴様は相変わらずの少女趣味だな。」
と鼻で笑ってくる。

「少女趣味で悪かったわね!べつに別に着たいわけじゃないし!」
と私は悪態をついたが、やっぱりドレスへの憧憬は捨てきれない。そんな表情を読み取ったのか、有無を言わさず彼に店へと押し込まれる。

店内で私が色とりどりのドレスに見とれている間、彼は店のマダムと話をしていた。
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