第2章 不思議の夢の歌劇愛好家«ミュージカルマニア»
午前中、今月の経費の収支の計算をしていた時だった。私は経費の収支で計算が少しずれている事に気が付いた。安吾さんに報告する。
「本当ですね、どこからずれているのか。先月の収支はきっちりと合っていた筈ですが、一応確認の為、先月の帳簿を探してきて貰っても良いですか。」
「はい、分かりました。」
私はそう言うと、部屋の書架の経費の帳簿の棚から先月分を見る為に梯子を掛け、帳簿を取りに上がった。最近の帳簿は1番上の棚にあった。かなりきつめに棚が詰まっていて帳簿が取り出しにくい。
「ぬうう、なんでこんなに取り出しにくいの。」
「さん、そんなふうに取り出そうとすると危ないですよ。取り出しにくいなら私が代わります。」
「安吾さん、ありがとうございます、大丈夫ですよ。そっちはそっちで、帳簿のずれたところを探していて下さい。」
笑顔で安吾さんに答えると、何とか少しだけ引っ張り出せた帳簿の背の部分を持って、左右に動かしながら少しずつ引き出していた。なかなか抜けないので早く引き出そうと、少し力を強めて引っ張った時だった。急に帳簿がすっと抜けた。私は抜けるに対するよりも少し強い力で引っ張っていた為、その勢いのまま梯子の上から真っ逆さまに落ちてしまった。
ドスンと大きな音を立て、床に叩きつけられた。書類に集中していた安吾さんも流石に気付いた。
「さん!?大丈夫ですか!?しっかりしてください!!」
安吾さんの慌てる声を最後に、頭を打ったらしく、そのまま私は気を失ってしまった。