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文スト夢短篇集

第1章 いのち短し恋せよ乙女


オペラが終わり、時計を見ると22時だった。こんな豪華なお姫様のような体験が出来て私は大満足だった。
「古いイタリア語は分からないけど、なんだか華やかで楽しいオペラだったね。
さて、そろそろホテルに戻ろっか。」
と、席を立とうとすると
「貴様、何を言っている。何のために貴様にその衣装を贈ったと思っている…。貴様のやりたい事はまだ終わっていないだろう?」
龍之介は、はぁとため息を着くと立ち上がり、来いと言わんばかりに腕を差し出す。私は慌てて龍之介の腕を取った。

連れていかれたのは大広間だった。オーケストラが音楽を奏で、仮装のカップルたちが踊っている。それは、私が夢に見ていたお姫様の世界だった。
「乙女よ、僕と踊れ。」
龍之介はそう言うと、右手を高く挙げ、胸の前に持ってくると右足を後ろに引きお辞儀をする。そして、左手を差し出してきた。
私は少し恥ずかしかったが、ドレスの裾を持つと腰を低くしてお辞儀を返した。
「はい、喜んで貴方と踊りましょう。」

私が手を取ると、龍之介はさっとホールドを組んでくれた。そして、少し強引なところもあったけれど、いつ練習したのかと思う程、リードが上手かった。
ワルツの軽やかな音楽に乗り、私は夢見心地でいた。仮面越しに彼の瞳を見つめ、まるで世界が私達だけになったかのように感じていた。そしてまた、私はこんな美しい死神ならば、死の舞踏を踊るのも悪くは無いなとも思っていた。
「ねぇ、美しい死神さん、私を死の舞踏で誘惑しているの?」
私は踊りながら冗談めかしてそう尋ねた。龍之介はふっと笑うと
「…ああ、貴様の命は僕のもの。愛している、。」

ワルツが終わり、お辞儀をする。龍之介は仮面を外すと、私を抱き寄せ、そっと口付けした。それは、忘れられない甘い甘い死の接吻だった。
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