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文スト夢短篇集

第1章 いのち短し恋せよ乙女


マジックショーが終わった。拍手が巻き起こると、ようやく龍之介が目を覚ました。そして、私の肩にもたれ掛かっていた事に気付き、一気に顔を真っ赤にして離れてしまった。
「…、さっきは酔っ払ってそのまま眠ってしまったらしいな…。済まない。
何処に居ようとも僕はポートマフィアの一員であると言うに、なんという不覚…。」
私は大したことではないと思うのだが、彼は相当悔しかったようで、悶々とした表情を浮かべていた。
「大丈夫だよ。それより少しお水飲む?」
私はそんな彼が可笑しくて、愛おしくて、少し困ったように笑って水の入ったグラスを差し出す。彼はグラスを一気に呷った。私はふとさっき酔いながら言ってくれた事が気になって聞いてみた。
「そう言えばさ、龍之介、さっき言ったこと覚えてる?」
「…?いいや、覚えていないが…?
……何か変な事を言ったのだったら、忘れてくれ。」
「そっか…。」
少し気まずい雰囲気が漂う。オペラは軽快な音楽で、時折笑いが巻き起こったりしていたが、そう言われたのがちょっと寂しかったりして、私は俯いていた。

「そんな顔をするな。貴様が笑っていないと僕が困る。貴様は僕の大切な恋人ゆえにな…。」
私が少し落ち込んでいるのを察した龍之介は、いつになく優しい目をして私を見つめてくる。忘れたとか言いながらもう一度同じ事を言ってくれた事に、私は急に鼻の奥がつーんとしてしまった。
「…うん、ありがとう。私にとっても龍之介は大切な恋人だよ。」
私は少し瞳を潤ませて、いつも以上の笑顔で龍之介に微笑んだ。
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