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文スト夢短篇集

第1章 いのち短し恋せよ乙女


私達はカジノルームを出ると貴賓室へと入っていった。ロココ調のソファに並んで2人で座る。これからこの貴賓室で、マジックやオペラなどのエンターテイメントを楽しみながら豪華なディナーを満喫するらしい。部屋の真ん中では早速マジックショーが始まっていた。が、私達はかなりおなかが空いていたのか、マジックよりも食事に夢中になった。

前菜、パスタ、リゾットとどれも美味しかったが、メインディッシュの魚料理が最高だった。そしてボーイが選んでくれた辛口の白ワインはとてもその魚料理にマッチしていた。魚は白身で、味付けは塩だけ、それを煮てペースト状にした素朴なヴェネツィアの郷土料理らしい。とはいえ、私も龍之介もお酒はあまり強くないので、ワインはお互いあまり飲み過ぎないようにしていた。が、少しワインのせいで気が緩んだ私は、ふとさっきのカジノでのことを思い出し、
「さっきのカジノでの龍之介、すっごくカッコ良かった。私と付き合ってくれてありがとう。また惚れ直しちゃったよ。」
と、ふにゃりと緩みきった笑顔でついつい普段なら照れて言えないようなことを言ってしまった。
その言葉を聞いていた龍之介は、照れるかと思いきや、顔がほんのり上気して少し据わった色っぽい目で私を見詰めてきた。そして呂律が回らないのに、顔を近付けてきて、
「…っく…、それくらい、当たり前…、だろう、…ひっく…。貴様は僕の可愛い…、僕の自慢の…美しい…恋人…。貴様のためなら…、ひっくっ…。」
とか普通だったら言わないような事を言い始めていた。かなり酔っている。彼の言葉は勿論嬉しかったが、これ以上彼が酔うのは拙いと思い、慌てて彼の手からワイングラスを奪う。
グラスのワインは、半分程しか飲まれていなかったが、彼が酔うのには充分な量だった。ふと隣を見ると食事の最中だと云うのに、彼はすっかり酔っ払って安らかな寝息を立てていた。私はくすりと笑うと彼に肩を貸してあげた。ボーイに食事を下げさせ、ドルチェとコーヒーをお願いした。

私はほろ苦いエスプレッソで酔いを覚ませた。そして肩に幸せな重みを感じながら、ドルチェを頬張っていた。
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