第1章 いのち短し恋せよ乙女
龍之介から教えて貰った通り、私は簡単に赤か黒かで掛けていたが、確率は2分の1の確率であるにも拘わらず、まさかの0勝4敗となっていた。
ふと龍之介を見れば、全く参加するつもりはなかったのか、ただ傍観している。そう思っていたら、5回終わったところで急に、
「黒の13。」
そう言うと龍之介は、黒の13、その一点に手持ちのチップを全て賭けた。配当は最高の36倍だが、その確率は37分の1。流石の私も青ざめた。
「ちょっ、ちょっと、龍之介、大丈夫なの?」
「ふん、ルーレットなぞ、ディーラーの回す癖を見ていればどこに入るかだいたい予想が着く。」
何故かはよく分からないけれど、龍之介の自信というのは、ものすごく納得してしまうものがある。ディーラーがNo More Betのコールを掛ける。ルーレットが回される。そしてディーラーがボールを投げ入れる。緊張の一瞬、私は目をぎゅっと瞑り、どうか外れませんようにと神様に祈る。カラカラとボールが音を立ててルーレットの上を転がる。だんだんと勢いがなくなり、そして、入った…!
ーーーJACK POTーーー
目を開くと、ボールはしっかりと黒の13に収まっていた。なんと、まさか龍之介は大穴を当てた。他のお客さん達も、一瞬ぽかんとしていたが、直ぐに1人が拍手を送るとそれが広まり、指笛を鳴らしの大喝采となった。私は思わず、
「うそ!!えっ!!龍之介!!やった!!やったね!!当たった!!やったー!!」
とか、大興奮で喜んでしまった。一方で当てた当の本人は、ふんといつものように傲岸不遜な表情をしている。
「まぁ、こんなものだろう。さて、腹拵えでもするか。行くぞ。」
そう言って当たった配当を総取りすると、私を連れて他のお客さん達からBravi!の嵐の中を颯爽と去っていく。