第8章 盗まれたのは
「そうだ、お前に話があったんだ」
夕食も大分進み、時間的にもいい頃合いの時父が口を開く。
なんの話か、そう聞き父を見る。
「愛香、明日の夜にパーティーを開くから準備を怠るなよ」
『えっ、パーティー?!
どうしてこんな時期に?』
「どうしてって…お前自分の誕生日も忘れてしまったのか?」
誕生日…え、私明日誕生日?!?!
仕事をしているとそこまで日付を意識する事がなくなってしまった為、自分の誕生日すら忘れてしまっていた。
まさか、明日だったとは…。
「まぁ、私の知り合いしか呼ばないつもりだから安心してくれ。
あぁ、それと。
誕生パーティーとある宝石のお披露目会も兼ねているからな」
『宝石…?』
「そう、これはお得意様から頼まれて明日の夜だけ皆さんにお披露目するんだがな。
通称人魚の涙、ベニトアイトと言って大変貴重な宝石だ。
通常で見てもとても美しい代物なんだが、紫外線を当てると尚一層輝きを増す宝石なんだ。
採掘量も少なく、これだけの大きさのは世界でも1つだけだろう。
実物は今厳重に保管しているから明日のお楽しみだ」
そう言ってその宝石の写真を見せられた。
確かにこの写真が実物大ならとても大きい。
子供の握り拳くらいの大きさもある。
これは国1つ買えるくらいの値段が付いていそうだ…。
そんなのと一緒に自分の誕生日を祝われるなんて気が滅入りそうだが、父が決めたならもう覆せまい。
「明日の夜と言っても夕方5時過ぎには始めるからな、たっぷりとお洒落するんだぞっ!
探君、すまないが先に失礼するよ。
いい気分で寝れそうなんでねっ」
「いえ、僕の事はお気になさらず」
「ありがとう、それではまた明日」
そう言って席を立とうとしてフラつく父。
それを見て母が立ち上がり父を支える。
「もう貴方ったら…。
お部屋まで送りますわ」
そう言って母はこちらに視線を一度寄越しニコリと笑って父と共に出て行った。
私も白馬さ…探さんも食事は終えている為、静かな空気が漂う。