第8章 盗まれたのは
辿り着いた先には既に私以外の人達が揃って座っていた。
そこには白馬さんの姿もあり、ラフな感じではあるが良いとこの御坊ちゃまだと分かる出で立ちをしていた。
『お待たせしてしまい、すいません』
そう言い早々に自身に用意されていた席に腰掛ける。
勿論椅子を引いたのは早乙女だ。
「体調の方はいかがですか?
先程お会いした時よりは顔色は良くなっているようですが」
こちらを白馬が見つめ話しかけてくる。
席順的に私の向かい側に座るのが彼なのだ。
嫌でも仲良くなれ、そう言われているような感じだ。
『えぇ、少し休ませていただいて大分良くなりました。
ありがとうございます』
「いえ、美しい方は元気がある方が尚美しく輝いて見えます。
先程の服装もお似合いでしたが、こちらもとても良く似合っておられる」
『あはは…ありがとうございます。
白馬さんもお似合いですよ』
「ありがとうございます。
愛香さん、僕の事は探、とお呼びしていただけないでしょうか。
僕は年下ですし、名前呼びの方が素直に嬉しいので」
『考慮しておきます』
「はっはっはっ、探君は積極的だなっ。
この子は押しに弱い、どんどん押すんだぞっ」
『ちょっと、お父さん!』
夕食が始まってまだ数分で既にワインを開け、酔い始めている父。
普段からあまり呑まないので、お酒に弱いのだ。
パーティーや会食などでも極力呑まないようにしているからである。
だからこうゆう家族が揃う日や、仕事が朝早くない時などは酔い潰れてしまうんだけども。