第7章 さよならは突然に
さて、先ずは…
『早乙女』
そう言って右手を彼の前に差し出す。
彼が持っているであろう端末を貰うためだ。
早乙女は一言「ん?」と言い近付いてきて私の手を取り抱き締め…
「欲しがり屋さんめ…」
耳元で囁いて触れるだけのキスを唇に落とされた。
『なっ…にすんのっ…!!!』
咄嗟の事に反応出来ずに唇を奪われたが、すぐに手を思い切り横に振り反撃に出る。
が、いとも簡単に受け止められてしまった。
「おー、怖。
昔はもっと大人しかったんだけどな、FBIに入って逞しくなっちゃって…。
まぁ、気の強いのも嫌いじゃないけどな」
手を取られたまま、身体再び引き寄せられ密着する。
壁際に押し付けられ、そしてそのまま空いている手の方で秘部を一撫でされて『んっ…!』と声が漏れた。
その事が恥ずかしく腹立たしくて顔に熱が集まる。
「へぇ、良い声で鳴くようになったな。
今夜にでもヤるか?」
『ふざけないでっ、誰があんたとヤるかっっ!!』
脚を後ろに振り上げ股間めがけてキックを繰り出そうとしたが、瞬時に後ろに逃げられ、そのまま扉の近くまで退散した早乙女。
本当行動が早いっ!!!
「おいおいっ、大事な所は狙ったらダメだろっ。
これからお前を孕ませる役目があるんだからな」
『不能になってしまえっ』
「ははっ、怖い怖い。
…では愛香様、夕食の頃にまたお迎えに上がりますのでごゆっくりなさって下さい」
扉をパタンと静かに閉め出て行く早乙女。
くっ、逃げられた…。
早乙女が居なくなり、ふと冷静になって違和感に気付く。
『ん…?
早乙女めっ…何処ぞのマジシャンかっ…!』
自身が着ているワンピースの背中部分にあるリボン状のベルト部分にスマートフォンが結び付けられていた。
手品師か、そう毒づきながらリボンを解きその携帯の電源を入れる。
電話帳やその他のデータなど確認したが、やはり必要事項しか入っていないただの端末だった。
ふーっとひと息つき、ベッドに仰向けに倒れこむ。
少しの間頭を整理しよう、そう思い徐々に来る眠気に身を委ねたのだった。