第7章 さよならは突然に
『初めまして、蓮見 愛香です。
何もない家ですが、どうぞゆっくりして行って下さい。
何かあれば私が家に居ますので、気軽にお声掛けて下さいね。
あ、お名前をお聞きしても?』
「すいません、男の僕の方から名乗るべきでしたね。
初めまして愛香さん。
僕は白馬探と申します。
後ろにいるのは、使用人のばあやです。
こんな綺麗な方とお会い出来るなんて…。
何か困った事がありましたら僕にご相談下さい」
そう言って私の片手をとり、そこにキスを落とす。
何処ぞの怪盗並みにキザな人なんだなと思ったが、悪い人ではないようなので安心した。
それにしても白馬探…?
何処かで聞いたような気がする。
「愛香、探君はとても優秀な探偵なんだ。
今は日本の高校に通っているが、その前に居たロンドンでは有名だったんだぞ」
あぁ!彼も高校生探偵をしている、白馬探か。
最近は探偵、と言うものに関わる事が多いな…そう考えてふと最近まで親密に関わっていた彼を思い出した。
あれ…?私一体どれくらい寝ていたんだ?
あの提案をしてくれたあの夜からどのくらいの時間が経った?
今の今まで流れに流されて忘れていた。
そこまで考えてサーーーッと体温が引いた気がした。
急いでこの場を後にして連絡を取らなければ!
そう思い、席を勢い良く立つ。
すると談笑していた皆んなの視線がこちらに向いた。
「おや?どうしたんだい、愛香」
「急に立ち上がるからママビックリしちゃったわ」
『ごめんなさい、早急にやらなきゃならない事を思い出してしまって…。
おいとまさせて頂いても?』
「こら、お客人の前だぞ」
「いえ、僕の方は構いません。
少し顔色が優れないようですし、まだお話できるチャンスは沢山ありますから」
「うむ…探君がそう言ってくれるのなら。
愛香、お前も長いフライトの後だ、しっかり休みなさい。
夕食にはちゃんと遅れずに来るんだぞ」
『ありがとうございます。
白馬さんもありがとうございます、では失礼致します』
ゆっくりと一礼をして、踵を返し部屋を出る。
後ろから早乙女が付いてきているが気にしてられない。
向かう先は自室だ。