第7章 さよならは突然に
何故リビングではなくて応接間?
そう疑問に思い、両親を見ると2人もこちらを見ていた。
「入る前に軽く説明をするぞ。
中にはお客人が居てな。
私の友人の息子さんなんだが、学生は今は夏休みだろ?
だから息子さんを預かって、2、3日うちに泊まらせる。
ってな事で、中にはその彼が来ているんだ。
ちょうど彼も今日到着したばかりだからね、お前にも紹介しようと思ってな」
「ママもさっきお会いしてね、とってもイケメンさんなのよっ。
ふふっ、若いっていいわねー」
「ママっーーー」
「あらっ、貴方が1番ですわよ」
両親のラブラブ劇はシカトしといて…どうやら中に人が居たらしい。
私にも会わせる為にここに連れてきたのか…。
2、3日ここで暮らす事に反対はしないけど、良い人だといいなぁ…そう思いながら早乙女が開けたドアの向こうに足を進める。
すると1人の青年がこちらに気付き、席を立つ。
その青年の隣には使用人だろうか、女性が控えていた。
「蓮見さん、すいません。
美味しい紅茶を使用人の方に淹れてもらい飲んでいました」
「いえいえ、寛いで下さいと言ったのは私どもですよ。
あぁ、これが紹介しようと思っていましたうちの1人娘です。
普段は帰って来ないんですが、暫くうちに滞在するようで。
居る間は是非仲良くやって下さると有り難い」
お父さんが私の手を引き、彼の目の前に突き出すような形で紹介される。
近くで見ると余計彼の整っている顔が分かり、思わず心の中で『ほー、確かにイケメンだわ』なんて思った。
とりあえず父の顔に泥を塗る訳にはいかないので、令嬢らしくちゃんと挨拶をしなければ。
水色と藍色の生地でストライプを表現したマキシ丈のワンピースの裾を持ち、広げながら脚を曲げて頭を下げる。
一番最初に覚えた所作の1つだ。
しなやかに、優雅に。
そして頭を上げて彼を見つめて自己紹介をする。