第6章 波乱が渦巻く仕事
「では、明日日付が変わる前に連絡下さいね。
さて…まずは薬を抜かせなければ帰るにも帰れませんね…」
そう言い彼が覆い被さり、愛香を再び押し倒してキスをしようとする。
唇が触れるか触れないかの際どい距離の時
コンコンコンーーーー
ビクっと2人して身体を硬直させる。
彼はすぐさま音のなる方を振り返ると、チッと短い舌打ちをした。
何があったんだろうと思って彼の隙間から覗き見てみると
そこには笑みを浮かべた沖矢昴がいた。
「すいませんが、うちの大事な妹を返していただけますか」
そう言う彼の笑顔からは、笑っている筈なのにとてつもない威圧感を感じる。
きっと彼は怒っているんだ、まぁ当然だが。
ガチャっと安室透が後部座席のドアを開ける。
「おや、どうしてここが分かったんでしょうか、沖矢昴さん」
「いえ、電話が途中で切れて心配だったので携帯のGPSを起動してここまで来たまでですよ」
「ほーー…それにしてはベストタイミングで来られましたね。
それこそ、タイミングを見計らったかのように」
やはり彼は会話を聞いていて、助けに来てくれたようだ。
いや、もっと前から来ていたのだろうが、事の成り行きを見て出てくるタイミングを伺っていたんだろう。
それにしても何故こんなに2人の会話には聞いている人達をヒヤヒヤさせるんだ。
とりあえず、この状況は辛い。
『あのっ…』
「妹が辛そうなので、返して貰っても?」
「…っ。
愛香さん、すいません、失礼します」
何が?そう思う暇もなくスッと抱き抱えられ、車内から出される。
「不本意ですが、お返し致します」
そのまま沖矢昴の所まで歩いて行き、彼が両手を広げて優しく私を受け取る。