第6章 波乱が渦巻く仕事
少し歩いたくらいだろうか、それ程長くない距離だろう、フワッとした感触の所に降ろされた。
気が付けば何度か乗せてもらった彼の愛車。
その後部座席に降ろされたのだった。
彼も一緒に後部座席に乗り込み、そのまま抱き締められる。
「何故君がここに居るのか、聞かせてもらってもいいですか…?
…愛香さん」
『…!!』
「僕の目は誤魔化せませんよ。
僕も変装が得意ですからね…まぁ、ベルモットは達人ですが、君の本来の顔を知らないですから彼女には身バレはしてませんので安心して下さい」
『ど…どうして…』
散々喘いだのだ、喉が渇いて掠れている。
それに気付いた彼が運転席の方からミネラルウォーターを取り出し彼女に渡す。
渡されたミネラルウォーターを受け取ろうと手を伸ばすが、上手く力が入らず、落ちてしまう。
それを落ちる寸前でキャッチし、キャップを開けたと思ったら彼自身が口に含んだ。
そして愛香の顎をグイっと上に向かせ、キスをする。
『んんっ…』
ゴクンゴクン…
静かな車内には水を飲む音が響く。
相当水分を欲していたのであろう、キスした彼の舌からもっと水分を貰おうと自ら積極的に絡めて行く。
静かにゆっくりと愛香を後ろに倒す。
一度唇を離し、水を自分の口に含め、物足りなそうに欲しがる彼女の唇にキスをし、再び水をゆっくりと流し込んでいく。
水が乾いた身体に巡って行く感覚がとても気持ちいい。
もっと欲しくて、もっとキスしたくて震える手を彼の頭の後ろに回す。
『ふっ…んんっ…ぁっ…』
その行程が何度か続き、漸く唇が離れた。
名残惜しそうな、そんな表情で彼を見つめる愛香。
そんな彼女にふっ…と笑って、再び体制を起こし、座らせてあげる。
「さて、話せるくらいにはなりましたか?」
『はい…すいません、本当に…』
「謝るのは僕の方です。
僕のもう1つの顔を知られてしまいましたし…なにより貴方を無理矢理抱いてしまいましたから。
すいませんでした」