第1章 それは突然に
「さぁ、着きましたよ」
数分歩くと目的の工藤邸に到着した。
この数分の間、3人の間には会話という会話がなかった。
それこそ、この3人の関係を意味しているようなものだ。
『わぁー、近くで見るとやっぱり立派なお宅ね』
沖矢は鍵を開け、扉を開き彼女を招く。
そのまま彼らは居間へ移動し、それぞれが椅子に腰かけた。
数秒間静かな時が流れーーーー
その沈黙を壊したのは
『ぶっ…ぷぷっ…』
1人の女性の吹き出しであった。
『あはははっ…ご、ごめんなさい、いきなり笑ってしまって…。
そんなに2人して睨まなくてもちゃんと質問には答えますよ』
いきなり笑い出した彼女に2人は目を丸くした。
一気に緊迫した空気がどこかへ行ってしまう程に。
「じゃあ聞くけど…
お姉さんは…僕らの敵?」
コナンが早速1番気になっていた事を聞く。
敵だと答えた時にすぐ対処出来るように腕時計の麻酔針を用意しつつ、相手の様子を伺う。
すると彼女は少し悩んだ風に答えた。
『んーーーっ。
答えはNo.』
「えっ、じゃあお姉さんは何者なの?」
『それはそこに居る彼が気付いてると思うなー。
ね、お兄ちゃん』
「はぁ…(俺に振るのか…)
えぇ、気付いてますよ。
…俺のお仲間さ」
沖矢昴は首元のチョーカーを弄り、元の赤井秀一の声に戻した。
そう、彼女は自分の仲間であるので偽る必要がないと感じたからだ。
「…FBIっ…!」
『わっ、シュウの声ってこんなイケボだったんだ…。
ジョディの言ってた通りだったなー』
「それで?説明してもらおうか」
少し威圧感を乗せ
沖矢昴開眼である。
『はぁーい…んーと、まず何から説明しましょーか…。
あ、少し長くなると思うから、お兄ちゃん飲み物欲しいなーっ』
「お兄ちゃん呼びする必要はないだろう…
仕方ない、坊や手伝ってくれ」
「あ、う、うんっ」
警戒心は解けたものの、考えを巡らせて石の様に固まっていたコナンを呼び、2人はキッチンへと向かった。