第6章 波乱が渦巻く仕事
カツカツカツ…
自分の後ろの方から足音が聞こえる。
それと同時に、その人物からであろう威圧感のようなものを感じ、自分が冷や汗をかいているのに気が付いた。
足音がふいに止まると、すぐ後ろに人の気配。
ツーっと冷や汗が背中を伝う不快感に顔を歪めつつ、ゆっくりと後ろを振り返る。
すると黒い衣服に身を包み、銀色の長髪の男がそこにいた。
思わずフードの下で目を見開く。
「おい、コイツか?」
低く威圧感を放つその声。
これはやばい、と思いざるおえない状況だ。
「はい、コイツが例の情報屋です。
…ジンさん」
そう今目の前に居るのは、黒の組織のジンなのだ。
なんて事をしてくれるんだ、コイツは…!!
そう思うが、下手に動く事も話す事も出来ないので、目線で彼を睨む。
「ふんっ…ご苦労だったな。
…行け」
そう言われてそそくさとこの場を退散する彼。
後で覚えとけよ…!なんて心の中で思うが、正直それどころではない。
この状況をどう抜け出すか、内心それだけしかないのだ。
「お前の事はボスから聞いている。
可能ならばお前を組織に…だとよ」
『…!
私みたいな下っ端を勧誘だなんて…そんなに人材にお困りですか?』
「自分の立場を分かっている奴は嫌いじゃねぇ。
付いて来い」
そう言って背を向け歩き出すジン。
今まであの鋭い眼光を向けられていた為、それから解放され、ふと肩の力が抜ける。
付いて行きたくはないが…恐らくここで拒否をすると強硬手段、もしくは殺されてしまう可能性もある為、今は大人しく付いていくのが懸命…だろう。
いや、付いて行った所で殺されてしまうかも知れないが、それはその場でどうするか考えよう。
バッグに入っている携帯のアプリをジンに気付かれない様にオンにする。
これにはGPS機能もある。
もし、何かあったら…きっと彼が来てくれる、そう信じてジンの後を追った。