第6章 波乱が渦巻く仕事
この店はいわばそう言った裏仕事や密会などでよく使われる。
表立ってはいないが、実は個室も何個かあるらしい。
まぁ使った事はないけれど。
程よく暗く設定してある店内の照明。
向かった先には、既に1人座っている。
「よぉ、来たな」
『こんばんは、お待たせしましたか?』
「いや、一杯やってた所だ、気にするな。
なんか頼むか?」
『いえ、用事が終わればすぐ帰るので』
「そう言うな、一杯だけでも飲んだけ」
『なら一杯だけ…すいません、レモンサワーで』
席に勧められ向かい合って座る。
相手の男はアメリカにいた時から何度か取引した相手だ。
見た目は少し草臥れているが、若い頃はそれなりにモテたであろう風貌をしている。
年齢は恐らく40代前後だろう。
名前は知らないが、ショウ、と名乗っている。
注文した飲み物が届き、さてと…と彼の方から話を進める。
「それで、例の情報は集まったのか?」
『えぇ、少しばかり時間はかかりましたが…ここに』
そう言って鞄の中からUSBが入っている封筒を出し、テーブルの上に置く。
男は封筒を取ると、上着の内ポケットに入れる。
「流石だな、またよろしく頼むよ。
いつもんとこに振り込んどく」
『分かりました、では…私はこれで』
飲み物を一口飲み、席を立つ。
すると慌てたように、男に待て待てと制止される。
なんだ…?と思いながら目深に被ったフードから、相手を見下す。
一応こういった仕事柄顔が割れてしまうと面倒なことになる為、特殊なメイクを施してロングコートを着てフードを被っている。
特殊なメイク…と言っても沖矢昴のようなマスクではなく、私本人だと分からない程度のメイクだ。
『まだ何かあるんですか』
そう言うと、ショウはニヤッと一つ笑みを浮かべる。
「いや、お前さんに会いたいと言う奴がいてな…。
お、ほら来たぞ」