第5章 潜入デート
「いえ…。
僕は少しここで風に当たっていきます」
『あ…では、お先に』
「送って行けずすいません。
お気をつけて」
そう言われタクシーが待っているであろう下に急ぐ為、背を向ける。
扉の前まで来て、ふと後ろを振り向くと、彼がフェンスに背を預けて空を仰いでいた。
なんだか少し物寂しいその姿に、後ろ髪を引かれる思いだがこの場に居るべきではないので、大人しく階段を下るのであった。
安室side
時々ネット経由などで、依頼が入る。
ペット探しや浮気調査など様々だが、今回はストーカー被害の依頼だった。
内容は依頼人である諏訪夫妻の娘、実里さん(17歳)がストーカー被害を受けており、その調査・確保である。
もちろん確保と言っても、現行犯で彼女に被害を加える所を証拠に収め、警察に引き渡す…と言った話だが。
少し調べたところ、どうやらストーカー男は近々開催される江古田高校の学園祭にて彼女に接触する事が分かった。
俺の手にかかれば直ぐに解決出来るのだがいい機会なので、今警戒している愛香に手伝ってもらう事にしよう。
そんなこんなで、彼女を誘うのに成功した。
彼女が来た時、あまりの綺麗さに驚いたのは記憶に新しい。
また、彼女と過ごす時間はとても楽しかった、と思う。
この日本の為に…!そう思って昔から過ごしてきていた為、あまりこうゆう所で異性と過ごす事がなかったのだ。
いや、正確にはやる事はやって来た…が。
彼女はある意味敵(俺にとってはFBIも敵だ)かも知れない、演技かも知れない彼女のコロコロと変わる表情に、自然と自分も笑顔になってしまっていた。
認めてしまったら駄目だと自分に言い聞かせているが、彼女に惹かれているのは確かなのだ。
「ふっ…これで演技だったのなら、俺は見事にしてやられてるな」
なんて独りごちてみる。
今は隣に彼女が居ないので聞かれる心配はないな。
などと思いながら、仕事を進める為、ストーカー男と被害者を見張りつつ距離を保つ。