第2章 初対面
番号を登録し終えた安室が下についたエレベーターの開くボタンを押して、愛香を先に行かせる。
助手席のドアを開け、自分も乗り込み、エンジンをかけ発進する直前に
「僕の着信音、どんなものになるか楽しみにしておきますね」
そう言い、マンションから出たのであった。
数分走らせると、見覚えのある所へ出た。
ポアロの近くにある駐車場へ車を停め、沖矢昴と合流するのを見届けるまで着いて行くと言うので、2人でポアロまでの道のりを歩く。
何故か恋人繋ぎで。
愛香は下を向いてこの状況を整理していた。
『(…車から降りる時、手を差し出されたから握ったら、ずっとこのまま…何故…)』
下を向いていた為か、向かい側から沖矢昴がこちらに気付き歩いてきている事に気付かない。
安室は沖矢昴をひと睨みし、視線を愛香に向け、彼女を自分の方になるように抱き締める。
つまり愛香からは沖矢昴が見えないようにしたのだ。
「愛香さん、今日はありがとうございました。
また後日ゆっくりと…」
『いえ、こちらこそありがとうございま……んっ…!』
言い終わる前に安室から濃厚なキスをされた。
今度は数回舌を絡めた後、すぐに離されたが。
すると後ろから知っている声が聞こえた。
「僕の大切な妹を誑かさないでいただきたいですね…安室君」
ドキっとしてすぐに後ろを振り返ると、沖矢昴がそこに居た。
安室はそんな彼女を行かせまいと彼女の肩を抱いている。
『お、お兄ちゃんっ…。
(わざと沖矢昴の目の前でキスしたのねっ…)』
「愛香さんは僕の大切な恋人ですから」
「ほぉーー…もうそんな関係に?」
驚きながらも違う違うと首を横に振る愛香。
「まだ、ですが、いずれ僕のモノにしてみせますよ。
その時は応援して下さいね、お兄さん」
安室の最後の言葉に、かなり刺々しさと挑発を感じるが、沖矢はしれっとした様子で
「愛香さん、帰りますよ」
そう言い、彼女の右手を掴み歩き出す。
引っ張れながら、安室の方を振り返りペコっと頭を下げると、安室はニコっと笑い返して、背を向けたので、自分も前へと向き直した。