第2章 初対面
『(それにしても、同じバイト先の後輩だからと言って
今日会ったばかりの異性を部屋に入れる…?
どんだけプレイボーイなのよ…。
まぁ、予想通りの展開だけどね)』
愛香はこうなることを予想していたのだ。
恐らく彼は情報が少ない私をハニトラしてでも情報を吐かせる…と。
まさか初日でここまでなるとは思はなかったが。
「愛香さん、コーヒーでよろしかったですか?」
『あ…すいません、ありがとうこざいます』
安室がキッチンからコーヒーの入ったマグカップを2つ持ってきて、1つを渡してくれた。
見た目普通のコーヒーだが…すん…と匂いを嗅いでみる。
…コーヒーの香りしかしない…はず。
これから一緒に働いていくであろう新人に、まさか自分が不利になるような薬類を入れていないと、信じて…
一口飲んでみる。
『(良かった…大丈夫みたいだ)
安室さんの淹れるコーヒーは本当美味しいですね。
お店でも大好評ですもん』
「お褒めにあずかり光栄です。
僕もお隣、いいですか?」
『……。』
そう聞いておいて、許可を貰わず隣に座る安室。
断られたとしても座るつもりなのか…ならば聞かないで欲しい。
物は良いが、そこまで大きくないソファー。
大の大人2人が座れば、肩が触れ合うほど近い距離。
隣に座っている為、お互いの息遣いまで聞こえる程の距離。
先に話を切り出したのは、安室の方だった。
「愛香さんは、どうして日本へ?」
『仕事で来たのもあります。
でも本当は兄の様子が気になったのと…少し寂しくなってしまって。
親も家もないのに、ホームシックになりました』
「(確か幼い頃に事故で亡くした…と書いてあったな…)
すいません…嫌な事を思い出させてしまいましたね。
ただ、貴女の事が知りたかっただけなんです」
『いえ、大丈夫です。
もう何十年も昔の事ですから、気にしないで下さい』
少し困った様に笑う愛香。
安室はそんな彼女を自分の方に引き寄せ抱き締める。