第2章 初対面
風見からの報告をきき、すぐさま車を走らせ彼女を迎えに行き、今に至る。
特に変わった点はないーーーー
この俺が見落としていた…だと…?
あり得ない、俺が警戒している人物に対して見落としなど。
だが、データベースに不法アクセスはなかった。
ならば誰か警察の者に変装し、警視庁に侵入しデータを改ざんした…?
ベルモット並みに変装の達人であっても侵入が難しい筈だ、それをやってのけ、尚且つデータ改ざん…。
恐らくそれをやってのけた人物は自分の隣に座っている彼女だろうと安室は考えている。
だが記録上、この日本へ来たのは3日前だ。
…この短時間でやったのか?
俺たち、警察官の目を盗んで。
いや、考え過ぎ、だろうか。
沖矢昴がただの一般市民であれば、彼女も必然的に一般市民だ。
だが、もしも赤井秀一であるのであれば…
彼女は俺の嫌いなアメリカの犬…FBIと言うことだ。
兎にも角にも、情報が少な過ぎる。
とりあえずは隣に居る彼女に接近し、情報を探るしかない。
その為には…
「(ハニートラップだってやってやるさ)」
安室の目が一瞬鋭く光ったのであった。
『安室さん、ドライブ…って言ってましたけど、何処に行くんですか?』
「そうですねぇ…愛香さんはここに来てまだ日が浅いようですから、有名な物がある辺り走りましょうか」
『本当ですか?
嬉しいですっ。
私全然土地勘なくて困ってた所だったんです』
そう困ったようにはにかむ姿を見て、少し心臓がトクリとした。
信号に捕まり、車が停まる。
「(この時々ある心拍の乱れはなんなんだっ…)
あっ…愛香さん、少しじっとしてて下さい…」
『えっ…どうしたんで…』
こちらを向いたかと思ったら、だんだん距離を詰めてくる安室。
その距離がゼロになりそうな時、目を瞑る。
その瞬間に自身の鞄の中に黒い小さなボタンの様な物が入るのを薄目で確認した。
「すいません、肩に糸屑が着いていましたので…。
はい、取れましたよ」
『(鞄の中に盗聴器を入れたわね…)
あ、ありがとうこざいます…す、すいません、変な事想像しちゃいました』
そう言い赤らんで見せる。