第2章 初対面
一通り仕事を教え、就業時間になった愛香。
ある程度お客も入り、お店は盛況だった。
「お疲れ様でした、愛香さん。
とても物覚えが良くて助かりましたよ。
これだとすぐに即戦力になりますね」
食器を洗いながら話しかけてきた安室。
今日1日で安室から色々教わった。
コーヒーや紅茶の淹れ方、お客様にお出しする際の注意点、噂のハムサンドの作り方まで色々だ。
彼の手際の良さには驚いたが。
自分を警戒しながらも、丁寧に教えてくれたので案外良い人なのか?と思うほどだ。
『(ま、バーボンだけどね。)
ありがとうございます!まだまだお2人には敵いませんが、頑張りますねっ!』
「愛香さん、安室さん!
お客様も引けたので、上がってもらって大丈夫ですよーっ」
梓さんの許可がおりたので、エプロンをとりバックをとる。
安室はどうやら奥の待機室に荷物を取りに行ったのか、姿が見えない。
『では、お先に失礼します!』
「お疲れ様でしたっー!」
梓さんの元気な声を背中に受け、ドアを開け外に出る。
するとタイミングを見計らったかのように、安室が走ってきた。
『愛香さん!
良かったら、僕の車で家まで送ります。
女性の一人歩きは最近危険ですからね。
ましてや美しい女性のなれば尚のことです』
やはり予想通り、安室は自分を車で送るつもりだったらしい。
まぁ、当然と言ったら当然だろうか。
警戒している人物の情報を少しでも欲しいであろう安室がこの機を逃すはずはない。
『ありがとうございます。
でも、すぐ近くですし…』
「では、親睦を深める、と言う意味を込めて
少し僕の車でドライブでもしませんか?
愛香さんの事が知りたいんです」
よくもまぁ、甘いセリフがポンポンと出てくる人だなぁと心の中で毒づく。
嫌いではないが、相手はバーボンだ。
油断ならない相手なのだ。
だが、もともと彼に着いて行くつもりであった。
愛香はこの誘いを承諾した。
『それなら…少しだけ』
「ありがとうこざいます。
今、車回してきますね」
安室が車を取りに駐車場の方へ消える。
愛香は携帯のアプリを開き、彼が来るのを待つ。