第2章 初対面
『おはようございます!梓さん!今日もよろしくお願いしますっ。
あ、あの…そちらの方が、安室さん、ですか?』
なんて透き通るような声だろうか。
色々な音が聞こえる中、彼女の声はスッと自分の中に入ってくる。
彼女が自分の名前を呼んだ時、自身が固まっていた事に気付く。
「(俺は何を考えていたんだ…今は安室透だ、しっかりしろ)
初めまして、挨拶が遅れてしまいましたね。
僕は安室透。
ここで働かせていただいてます」
持ち前のキラースマイルを発動し、爽やかに自己紹介してみせる。
これが世の中の普通の女性達ならイチコロだろう。
『(イケメンだけどなぁ…爽やか過ぎて胡散臭い…)
わぁっ、梓さん、本当にイケメンさんでした!
昨日からお世話になっている沖矢愛香です!
精一杯頑張りますので、ご鞭撻の程よろしくお願いします!』
彼女の名前を聞いた途端、安室の身体が雷に撃たれたような衝撃を受けた。
「愛香さんは、たまにいらっしゃるイケメンの沖矢昴さんの妹さんなんですよね!
美男美女兄妹ですね!」
「(沖矢昴の…妹…だとっ…!?!?)」
彼女達が何やら会話しているが、正直それどころではない。
それもそうだろう、彼が血眼になって探している赤井秀一であると睨んでいる沖矢昴の妹だと言っているのだ。
彼の頭の中は今、フル回転している。
沖矢昴の妹…?馬鹿な、そんな訳がない。
奴を調べた時、家族構成や交友関係など調べられるものは調べ尽くした。
奴に妹は居なかったはずだ…!
俺の見落としか…?そんな初歩的な見落としをするはずが…!
くそっ…一度調べなおさなければならないな…。
『あ、あの…。
安室さん、大丈夫ですか…?
なんかちょっと怖い顔になってますよ』
「(しまった、考え事をし過ぎたか)
いえ、大丈夫です。
少し考え事をしてしまって。
さ、仕事内容をお教えしますね」
ひとまず、仕事だ。
彼女の事を調べるにしても、まずは目先の事に集中しなければ。
それに彼女を観察する必要もある。
安室は自分に喝を入れ、気合いを入れたのであった。