第2章 初対面
「それはそうと、今日もポアロでしたよね。
何時にお帰りですか?」
コーヒーを片手に、目線だけこっちに寄越して話しかけてくる沖矢。
目線…と言っても目が細すぎて何処を見ているのか分からないのだが…。
『んーー、多分夕方かな?
あ、でも迎えはいりませんよ。
恐らく安室透の車で送ってもらう事になるでしょうから』
若干不服ながらも、沖矢が用意した朝食を平らげた彼女はそう言う。
「まぁ…赤井秀一だと怪しんでる僕の妹が現れた…となれば彼はかなり食いついてくるでしょうからね」
『そーゆう事です。
あ、これイヤホンです』
「…?」
ポイっと投げつけられた物は、片耳用のワイヤレスイヤホン。
『私と彼のやりとり、気になるでしょう?
私の方で携帯のアプリ起動すると聴こえるようになってますから、お楽しみに。
ご飯、ご馳走様でした。
今度は私も作りますね』
「楽しみにしてますね。
あ、ご飯の件も。
いってらっしゃい、お気をつけて」
所変わってポアローーーー
「安室さん!昨日入って新しいアルバイターさん、とっーーても美人さんですよっ!
もうそろそろ来ますから、色々よろしくお願いしますねっっ」
ポアロでは開店準備を梓と安室で行なっていた。
それぞれの準備をしながら梓は昨日入ったばかりの愛香の話を振る。
「それは楽しみですね。
早く即戦力になっていただきたいので、ビシバシ教えますよ」
「ふふふ、お手柔らかにお願いしますね」
カランカランカラン…
「あっ、愛香さん!おはようございます!
今日もよろしくお願いしますね」
心臓がドクンと鳴った気がした。
驚いた、のもあるが、彼女がとても自分の好みのタイプだったからだ。
いや、好みのタイプと言ってもそんなものはないに等しいのだが、何故かそう直感してしまった。