第8章 盗まれたのは
「だから言ったろ?本物だって…いてて」
横に引っ張ってすぐに手を離したが、思いっきりやったので結構痛かったようだ…ほっぺが赤くなっている。
と言うか、それよりも…怪盗キッドが本当に黒羽快斗だった事に驚いて言葉が出ない。
「おー、口がパクパクしてて金魚みてぇー可愛いーww」
『ちょっ、からかわないでっ』
こうやって戯れていれるのも、相手が快斗君だからだ。
理由とか色々気になるが、これは聞いちゃいけない事だ。
だから聞かない、気にしない、それが一番。
「さぁーて、俺の正体もバレちゃった訳だし…。
帰るか、日本に」
『へっ…?』
思わず顔がポカンとしてしまった。
彼はその顔を見てケラケラと笑っていた。
「何変な顔してんだよっww
愛香も言ったろ?日本へ連れて行ってくれないかって」
『いや、確かに言った…言ったけど』
「無理だって?」
『…っ』
帰りたいのは確かなのだ。
だが、怪盗キッドを悪者にして、家族に友人に何も言わずに行くことなんて出来ない。
ましてや私は皆んなに心配をかけてしまっているのだ。
私の我儘ばかりに皆んなを巻き込んでしまっては行けない。
「日本は危険でいきなり実家に帰ったにもかかわらず、何も言わずに日本へ戻るのは気が引ける…しかも怪盗キッドの手によって…ってか?」
『な、なんでっ…』
「ある程度愛香の情報は調べさせてもらった。
データは少なかったけどなー。
まぁ、なんか秘密があるっぽいし詳しくは聞かない。
けど、別に愛香がしたいようにしてもいいんじゃね?
結局物事はなるようにしかならないんだからよー。
独り塞ぎ込んでても意味なんかねぇよ。
親の所には後で連絡すればいいだろ。
やらないで後悔よりやって後悔なw」
『ぷっ…なにそれ、結局後悔するのね。
…でもありがとう…。
快斗…いえ、怪盗キッド、私を連れ去って下さいますか?』
彼は帽子を被り直しモノクルを付け、フッと笑った。
「勿論です、貴方が望むままに」