第8章 盗まれたのは
「おや、思ったより早く復旧出来ましたね」
『そうですね、パニックが起こらなくて良かったです』
ふぅとひと息吐き出す。
誕生日なのに、今日は色々と災難だ、そう思っていると目の前に見知った顔が現れた。
「愛香さん、大丈夫でしたか!
急に停電になりましたが…っ…!?」
『えっ…?』
「…」
驚くのは無理もないと言って欲しい。
正直目の前にしている彼を見て声を失ってしまったのだ。
何故なら目の前に居る彼はーーーーー
白馬探、本人なのだから。
では私が今抱き締められている彼はーーーー?
一体どうゆう……
そんな事を考える暇もなく、抱き締められていた腕に更に力が入ったのが感覚で分かった。
それと同時に目の前に居る白馬探の方が大きな声で叫ぶ。
「愛香さんっっ、
早くそいつから離れて下さいっ!!!」
その声が私に届くのが早かったか、はたまた私が宙に浮くのが早かったか、同時だったのかは分からない。
が、私が目の前の白馬探の差し出された手を取るより先に天井高くまで強い力で持ち上げられたのは確かだ。
だってほら、こんなにも人が小さく見えるんだもの。
「くっ…。
こんな所まで来るとは…怪盗キッドっ…!!!」
ザワザワと騒がしい筈なのに、下に居る白馬探の声がいやに耳に届いた。
その言葉でやっと理解した。
そしてゆっくりと背後から抱き締めているであろう彼を見る為に顔を動かす。
そして真っ白な布地が目に入り、モノクル越しに彼と目が合った。
確かに先程までは白馬探であった人物ーーー
怪盗キッドがそこにいた。